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解析手法の概要
DuCOMは,コンピューター上の仮想空間にバーチャルコンクリート構造を製造・建設する総合シミュレーション技術です.コンクリートを製造・養生して,構造物レベルで使用に供する一連の過程をシミュレーションする総合解析技術を目指しています.時事刻々と変化するコンクリートの組織構造,その中に存在する凝縮水と水蒸気の平衡と移動,熱の発生と伝導,自己収縮や乾燥収縮などの体積変化,応力やひび割れの発生,それ以後の非線形挙動などを,工学上の情報として得る事ができます.現在では,酸素・二酸化炭素・塩化物イオンの移動や固定,炭酸化と鋼材腐食に伴う酸化反応,カルシウムイオン移動とリーチング,高含水骨材の応用などにも応用の幅を拡げつつあります.
DuCOMの基本構造と使用モデルについては,参考文献1)〜4)などに詳しく記述されていますので,ここでは,その骨子をまとめて記述します.DuCOMは,下図の各基本モデルを相互に連結させた複合システムとなっています.各モデルを連結し,エネルギー保存法則,質量保存則,熱力学第二法則,力の釣り合い則等に従うという条件と境界条件から解析し,時事刻々と変化するコンクリートをコンピューターの中に再現していくのです.

熱力学連成解析システムDuCOMの全体スキーム
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例えば,構造体中のセメントコンクリートの水和反応速度は,水和反応で形成されるセメント硬化体の幾何構造にも影響を受けます(特に低水セメント比コンクリートの場合).生成されたCSHゲルの層間空隙に既に挟み込まれた水分子と,ゲル表面に強固に吸着される水分子(ナノスケール)は水和反応に寄与せず,マイクロスケールの細孔構造に凝縮する水が,水和反応に寄与するからです.さらに,これらの水は空隙中の水蒸気分圧に依存(平衡)し,同時に水の移動に影響を及ぼします.これによって細孔中の間隙水圧力は変動し,セメント硬化体に体積変化をもたらし,コンクリート構造の変形・たわみ(メートルスケール)と,ひび割れ損傷や応力変化があらわれます.そして,ひび割れ損傷は水やその他の物質移動を促進させ,結果として鋼材酸化腐食,炭酸化反応に影響を及ぼし,細孔組織構造の変化をもたらすことになります.DuCOMでは,以上のように連携するゲル空隙中の吸着層(水分子のおよそ10倍程度)とコンクリート部材のたわみ・変形を,解析的に追跡するシステムが構築されています.
ナノからマクロへ連携する非線形解析技術は,コンクリート構造の寿命推定や劣化予測などのライフスパンシミュレーションに応用することができます.構造力学問題の拡張ですので,初期条件と境界条件を設定して,解析を実行します.初期条件を設定する時間は,コンクリートが型枠内に打設された時となります.すなわち,コンクリートの配合,結合材の化学組成,初期温度,構造形状・寸法のみを入力することになります.以後のコンクリートの物性(例えば,透水係数,空隙率,吸脱着履歴特性,剛性,強度,塩化物イオン拡散係数等)は,材料試験から求めるのではなく,あくまで計算される諸量となります.これらの諸量を用いて支配方程式を解き,更に物性変化が計算され,自己完結的な評価から,最終的には部材・構造の応答が求まることになります.
参考文献
1) |
Koichi MAEKAWA, Rajesh CHAUBE and Toshiharu KISHI:Modelling of Concrete Performance Hydration, Microstructure Formation and Transport, E & FN SPON, 1999. |
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2) |
Maekawa, K., Okamura, H. and Pimanmas, A.:Nonlinear Mechanics of Reinforced Concrete,SPON PRESS,2003. |
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3) |
Koichi MAEKAWA, Tetsuya ISHIDA and Toshiharu KISHI:Multi-scale Modeling of Concrete Performance -Integrated Material and Structural Mechanics, Journal of Advanced Concrete Technology, Vol. 1, No. 2, pp.91-126, 2003. |
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4) |
前川宏一,石田哲也,土屋智史:非線形解析技術 −ナノからマクロへの連携−, プレストレストコンクリート −PCとコンクリート構造−,Vol.43, No.2, pp.43-49,プレストレストコンクリート技術協会, 2001.3 |
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