−鋼材損傷を受けた部材の応答評価と構造性能アセスメント− 腐食とアルカリ骨材反応
Created on 3rd July 2004.
損傷を有する構造物への適用などにも記述している通り,損傷を有する既存構造物に対しても,構造解析を適用できるように拡張すべく研究開発を進めております.載荷履歴を忠実に考慮しており,かつ最大4方向までのひび割れを考慮可能な平面モデルの利点を活かして,一般性,将来展望性の高い手法の開発に努めております.この程,いくつかの事例で良好な研究成果を得ることができ,バージョンアップを達成致しました.
コンクリート中の鉄筋は,通常はコンクリートがアルカリ性であることから錆びにくい状態にありますが,供用期間中に酸素,二酸化炭素,塩化物イオンが徐々に浸入してくることなどによって,錆を生じてしまうことがあります.この時,適切な処置を行わなければ,発錆による体積膨張により鋼材周りのコンクリートにひび割れが入ってしまったり,引張力に対して抵抗できる鋼材の断面積が減少してしまったりします.また,鋼材腐食とそれに伴うひび割れは,湿度・風・雨水(雨がかり)等の非常に局所的な条件によって部分的に発生することが知られております.
DuCOM に関する知見も活用し,相互に連携することによって,このような部分的に鋼材腐食とその膨張に伴うひび割れや定着不良が発生した部材の保有する耐荷性状を,COM3 およびWCOMD によって評価する検討を進めてきました.載荷実験との比較検討を通して,WCOMD の保有する精度が検証され,損傷部位によって破壊モードやせん断耐力が変化することをおおむね再現できることが認められています1)〜3)など .
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せん断補強鉄筋の曲げ定着部がアルカリ骨材反応による膨張によって破断する事例が報告されています.COM3 およびWCOMD は定着不良となった実構造物の残存保有耐力と性能の評価にいち早く適用され,NHK等の報道(2003年4月)においても紹介されました.下図は,せん断補強鋼材の損傷を受けた部材のせん断挙動に対して,WCOMD の有する精度を検証するために行われた実験のシミュレーションの一例3),4) です.破壊モードの変化やせん断耐力の変化を忠実に再現することが可能となっています.
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ここで示したような研究開発の進展により,シミュレーション技術を活用した社会基盤施設のライフサイクルアセスメントへの取り組みが,いよいよ現実のものとなってまいりました5),6)など .
※参考文献にある"Journal of Advanced Concrete Technology"は,日本コンクリート工学協会(JCI)より刊行されている英語論文集です.
参考文献
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Kukrit TOONGOENTHONG,前川宏一:Shear Capacity of Damaged RC Beam with Partial Longitudinal Cracks in Space,Vol.26,コンクリート工学協会,2004.7 |
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Koichi MAEKAWA, Tetsuya ISHIDA and Toshiharu KISHI:Multi-scale Modeling of Concrete Performance -Integrated Material and Structural Mechanics, Journal of Advanced Concrete Technology, Vol. 1, No. 2, pp.91-126, 2003. |
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3) |
Kukrit TOONGOENTHONG and Koichi MAEKAWA:Unified FEM Computaional Approach for Material Expansion inside RC due to Reinforcement Corrosion and ASR,CONSEC '04,2004.6 |
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4) |
前川宏一,中村光,佐藤靖彦,Kukrit TOONGOENTHONG:せん断補強筋の定着不良がRCはりのせん断耐力に及ぼす影響,コンクリート工学年次論文集,Vol.26,コンクリート工学協会,2004.7 |
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5) |
Kukrit TOONGOENTHONG and Koichi MAEKAWA:Multi-Mechanical Approach to Structural Performance Assessment of Corroded RC Members in Shear, Journal of Advanced Concrete Technology, Vol. 3, No. 1, pp.107-122, 2005. |
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6) |
Kukrit TOONGOENTHONG and Koichi MAEKAWA:Computational Performance Assessment of Damaged RC Members with Fractured Stirrups, Journal of Advanced Concrete Technology, Vol. 3, No. 1, pp.123-136, 2005. |
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