−大ひずみ領域での時間依存性および繰り返し効果の高度化−

Created on 3rd July 2004.

鉄筋コンクリートの構成則は高速載荷用と実験室レベルの実験を対象とした中・低速度載荷用の2者に対応し,ユーザーが解析対象ごとに選択できるようになっていました.今回のバージョンアップでは,新たに開発された,任意のひずみ速度に対応できる構成則1)〜4)が導入されました.耐震解析においては,ひずみ速度効果は最大耐力までは顕著ではないことが知られていますが,最大耐力以後の軟化域では,ひずみ速度は荷重変位関係に大きな影響を及ぼします.これまでの軟化解析では,材料の高速塑性や高速損傷が厳密に扱われておらず,必ずしも一般性のあるものではありませんでした.今回の開発で耐力以後の信頼性向上が図られました.以下に,大ひずみ領域での解析事例を掲載します2)


 

   

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また,大ひずみ領域での時間依存性が扱われるようになったことで,低サイクル疲労を厳密に扱うことができるようになりました.大ひずみ領域で繰り返し荷重を与えると見かけ上,繰り返しの影響を受けたかのごとく,変形や耐力が変化します.しかし,この非線形の中には時間効果も一緒に入っています.今回のレベルアップでこの時間効果が厳密に扱われることになり,真に繰り返しの影響を抽出することが可能となりました.その結果,繰り返し回数がかなり多い荷重を受けるRCの応答特性の解析精度を従来以上に向上させることができました.なお,モデルは中応力域の高サイクル疲労にも対応できるように開発されていますので,長期荷重を受ける部材の遅れ破壊を解析することが同時に可能となりました.

※参考文献にある"Journal of Advanced Concrete Technology"は,日本コンクリート工学協会(JCI)より刊行されている英語論文集です.



参考文献

1)

Khaled Farouk El-Kashif and Koichi Maekawa:Time-Dependent Nonlinearity of Compression Softening in Concrete,Journal of Advanced Concrete Technology, Vol. 2, No. 2, pp.233-248, 2004.

2)

Koichi Maekawa and Khaled Farouk El-Kashif:Cyclic Cumulative Damaging of Reinforced Concrete in Post-Peak Regions,Journal of Advanced Concrete Technology, Vol. 2, No. 2, pp.257-271, 2004.

3)

Khaled Farouk El-Kashif:Time-Dependent Compressive Deformation of Concrete and Post-Peak Structural Softening,東京大学博士論文,2003.

4)

Khaled Farouk El-Kashif and Koichi Maekawa:Time-Dependent Post-Peak Softening of RC Members in Flexure,Journal of Advanced Concrete Technology, Vol. 2, No. 3, pp.301-315, 2004.

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